2023年07月10日
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三百字小説『打算の多い吉田さん』

Written By: 遠野秋彦連絡先

 吉田さんは打算が多かった。

 「この路線は確率的に事故が多いから避けよう。このお菓子は内容量が他と比べて少し多いから買おう。友達は驕ってもらえる確率が高いから金持ちだ」

 ある日、気になった友人が質問してみた。

 「君には純愛というものはないのかい? つまり打算抜きに好きな人はいるのかい?」

 「もちろんだ」

 そこで、吉田さんの純愛の相手は誰か、みんなで賭をすることになった。

 「それで、打算抜きに好きな相手って誰?」と有人は質問した。

 吉田さんは自分を指さした。

 全員予測が外れた。

 「賭は親の総取り」

 「親って誰?」

 吉田さんは自分を指さした。

(遠野秋彦・作 ©2023 TOHNO, Akihiko)

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