吉田さんは打算が多かった。
「この路線は確率的に事故が多いから避けよう。このお菓子は内容量が他と比べて少し多いから買おう。友達は驕ってもらえる確率が高いから金持ちだ」
ある日、気になった友人が質問してみた。
「君には純愛というものはないのかい? つまり打算抜きに好きな人はいるのかい?」
「もちろんだ」
そこで、吉田さんの純愛の相手は誰か、みんなで賭をすることになった。
「それで、打算抜きに好きな相手って誰?」と有人は質問した。
吉田さんは自分を指さした。
全員予測が外れた。
「賭は親の総取り」
「親って誰?」
吉田さんは自分を指さした。
(遠野秋彦・作 ©2023 TOHNO, Akihiko)